株小説エビ銀 路地裏の大投資家が教えてくれたこと

　小説の形式をとりながら、株式投資における重要なポイントを具体的に指摘してくれる興味深い一冊。

　読みやすい文章で一気に読み進めることができる。投資未経験の若い夫婦が師匠の教えに従い実際の投資で成功し成長していく姿に共感する人も多いだろう。また、示されている「投資に勝つコツ」は首肯できるものが多かった。

　本書の中ではうまくいった場合だけでなくネットの情報にふりまわされて損失を被る事例も紹介されてはいる。

　が、全体のバランスとしてはうまくいった事例の比率がやや高すぎる感じもした。実際の投資ではもっと様々な「落とし穴」が存在する。それは○○ショック、個々の企業の不祥事といった外部要因の場合もあれば、個々の分析の誤りや判断ミスといった内部要因の場合もある。あまりあれこれの内容を盛り込むと全体の構成が難しいが、こうした面にももっとふれてもらいたかったようにも思う。

　また、全体の小説の構成としては後半は仕手戦勝負の勝ち負けとその結末というようなところに話がいってしまい、実際に個人投資家が陥りがちな悩みや失敗などについての内容が薄くなってしまった印象もある。

　最後に用語解説があるのは丁寧だが、同時に「コツ」も一覧としてまとめられているとよかったかもしれない。

　本職の作家の書いた経済小説と比較すれば、人物のキャラクター設定が浅いと感じられるところもあったが、これはしょうがないところか。さらにパワーアップした次回作を期待したい。

ふしみん 個人投資家（投資歴 29年）
鳳凰堂のランダムウォーカー

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